年末に書ききれなかった、12月27日の日記。

今朝は9時半ごろ家を出て、目黒へ教習に出かけようとした。
わたしが乗った都営三田線の電車は、一駅進むごとに「時間調整です」と言って数分止まった。
これでは間に合わないんじゃないかな、と思いながらも、仕方がないのでわたしはそのまま乗っていた。
最終的にその電車は、駅と駅の間でも数百メートル進むごとに数分止まった。
どうやら、車両トラブルでダイヤがかなり乱れていて、前の電車がつかえているらしかった。
時間を見ようとして、携帯電話もiPhoneも腕時計も忘れてきたことに気づいた。
向かいに座っているスーツ姿のおじさんに、「すみません、いま何時ですか?」と尋ねた。
おじさんは「9時52分だよ。」と親切に答えてくれた。
「なかなか進みそうにないね。」とおじさんは言った。

白金高輪の駅に着いたところで、教習には間に合わない時間になっていた。
改札の横の公衆電話から教習所に電話をかけた。
「そういう場合はキャンセル料はいらないですよ。」と電話に出た女の人は言った。
「14時の予約は来れますか?」はい、と私は答えた。



急に時間が空いたので、白金高輪駅の出口から外に出た。
東京は今日もいい天気だ。
わたしは自転車が欲しかった。
白金高輪から三田に向かって歩いた。
三田には広告代理店のような名前のホームセンターがあることをわたしは知っていた。
そこには自転車も売っているだろうと前から思っていたが、まだ行った事はなかった。
白金高輪から三田は、意外と近かった。

ケーヨーデーツーに自転車は売っていなかった。
タイヤのチューブや自動車のワックスは売っていたが、自転車は売っていなかった。
都内でホームセンターらしいホームセンターを見たのは初めてだった。
わたしは幼い頃のことを思い出しながら、しばらく店内を見て回った。
そして、店を出た。

12時の学科まではもう少し時間があった。
歩いていくと、何となく学生街っぽくなってきた。
大通りの向かい側の黄色い看板に人が並んでいた。
少し考えて、わたしもそこに並んだ。
ラーメン二郎については皆さんの方がよく知っていると思う。
わたしはそれを食べた事がなかった。
携帯もiPhoneも忘れて、ツイートできない今日こそ、わたしは二郎を食べるべきだ。
なぜか、そう思った。

しばらく並んだ。
想像よりも、列の進みは遅かった。
そっか、多いのか、量が。
と、わたしは心の中で言った。

わたしは、わたしの後ろで列に並んでいる身長の高い男性に、「いま11時なんぷんですか?」と尋ねた。
男性は「45分だよ。11時45分。」と親切に答えてくれた。
ありがとうございます、と言って、私は列を抜けて、白金高輪駅へ走った。

ダイヤは相変わらず乱れているようだったが、しばらくして来た南北線は普通に目黒駅に着いた。
12時7分だった。
あと10分早く、後ろの男性に時間を聞かなくてはいけなかった。
わたしはそのままもう一度、日吉行の電車に乗り込んだ。



武蔵小山の駅に来るのは確かこれで4度目だ。
この駅の東口にはとても立派な、アーケードに包まれた商店街がある。
なんでもある商店街だ。
ここなら自転車を手に入れる事ができるだろうと、私は考えた。

商店街をたくさんの人が歩いていた。
ほんとうに、この商店街にはなんでもあるなあ。
そう思いながら歩いた。
チェーンの飲食店も個人商店もアーケードの中に同じように綺麗に収まっていた。
しばらく歩いたが、なかなか自転車店は見つからなかった。
ここにもないのかと、不安になった。
商店街の出口に近づいた。自転車店があった。それも、大きいのが。
こういうところに来たかったのだ。

26インチで6段変速のママチャリ。
前のより少し良い、自動でライトが付くものにした。
「目黒はどっちですか?」と自転車屋の兄ちゃんに尋ねた。
自転車屋は「26号を真っ直ぐ行って、郵便局で目黒通りに入ればいいよ。」と親切に答えてくれた。
新しい自転車の乗り心地はなかなかいい。
ただ、もう少し前傾姿勢をとれるものの方がいいことを、すっかり忘れていた。



無事に14時からの教習を二時間分終え、わたしは自転車に乗って教習所から目黒駅へ向かい、
目黒駅から権之助坂を下り、橋を渡って中目黒方面へ曲がった。
黄色い看板が見えて、わたしは自転車を降りた。
2人の男性が並んでいたが、すぐに店内へと移動した。
わたしは販売機を確認し、財布から500円玉を取り出して投入し、ボタンを押した。
青い札が、カランと落ちてきた。
一番奥の席があき、わたしは席に着いて、札をカウンターに出した。
水を持ってこなかった事に気づいて、席を立って水を汲んだ。
もう並んでいる人はいなかった。

いつ訊かれるんだろう――そう考えながら、かなりの時間が経つように感じた。
「トッピングはどうします」
笑顔を作って、店員さんはわたしに訊いた。
「ニンニクを、少しだけ、入れてください」
店員さんの笑顔はなんだか似合わなかったけど、わたしは嬉しかった。

太い麺はこれまで食べた事はなかった。
一口食べた。
おいしいじゃん…。
想像よりも、それはおいしかった。
油の層の下の濃いスープから太い麺を啜った。
野菜と麺を交互に食べる。
柔らかな豚をときおりかじる。
わたしは初めての二郎を堪能した。

最後の一口を食べながら、次は、野菜がもう少し欲しいな、そう思った。



夕暮れの港区を、自転車はとても快適に走った。
今日はとても天気のいい、年の暮れの良い一日だった。